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小型船舶用として使用する可能性が低い機能を新規に付加するような投資は、製造者・使用者いずれからも、経済効果の面から困難と考える。

 

(5) 動画像としての海上監視レーダー映像は、大型船では利用価値があると見られる。大型船ではレーダーは航海計器として必須である。また、ARPAレーダーの装備率も高い。レーダー映像の表示方法も船首アップ、針路アップ、真北アップに相対表示、真運動表示が組み合わされ多様である。ここに海上監視レーダー映像を重畳表示すると、各種映像が混濁した状態となり、本船と周囲の船との相対関係を把握するのがかえって困難となろう。また、海上監視レーダーの映像のみを表示するのは危険であり、船側の賛同を得難いと考える。

 

(6) 大型船が搭載を開始している電子海図表示装置に海上監視レーダーの映像を表示する案がある。操舵性の悪い大型船では小型船に比べ、行き会い船、横切り船等の情報を必要とする。

表示装置上に生映像を重畳表示するのは、海図と海上監視レーダー映像の位置的整合をとるのが難しい。人工合成映像の場合は、映像と地図の多少のずれは許容されようから実現の可能性はある。それにしても、船舶側が必要とする沿岸航行援助情報センターが持つ船舶データをどこに表示するかが課題である。現在の電子海図表示装置はこのような事態を考慮していない。

日本国籍船にたいしては日本語(漢字)を使用したいが、国際性を考えると日本語のみは困難である。ちなみに、日本が運航する外航船の数(日本商船船腹統計−1995)は1,731隻、内日本国籍船は190隻であり、大多数は外国籍船舶(日本法規等の適用外)の用船である。当然ながら、このほかに外国が運航する外国籍の船舶もある。文字データの表示は英語とし、原則として行き会い船等の船名表示を避け、信号符字を採用することになる。(外国船の船名にはかなり文字数が多いものがある)

(7) 本船の表示装置に海上監視レーダーの映像を表示する場合、海上監視レーダー映像の座標系を船舶側に伝送する必要がある。生映像の場合は、レーダー信号にレーダー位置データを付加し、人工合成映像データの場合は人工合成映像データと該当沿岸航行援助情報センターの座標原点を付加する。船舶側では、これら座標データを基に本船の移動座標系に変換してから表示することになる。

(8) 動画の場合、海上監視レーダーからの映像に固定マーカー、可変マーカー、方位カーソル、船首線等を本船中心に表示しないと船側の使い勝手が悪い。

複合レーダー映像信号の場合、船側で、マーカーの時間軸上の原点を決定するのが困難である。ラスターデータの場合にはこのようなマーカー等の表示は問題外である。

海上目標の人工合成映像をデジタルデータで送り、本船側で必要な座標変換を行うのは技術的には実現可能である。

注:海上監視レーダーと船舶レーダーでは、時間軸の調整が異なる。船は一度装備されればケーブル長が定まるので、この関係は不変である。海上監視レーダーの映像に対しては、船が情報をとる相手のレーダーが変わるつど調整が必要になる。複合映像信号形式についての国際的な基準が必要になる。

 

 

 

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